ヤマハB-2のメンテをご紹介します。(4/27)
ヤマハのB-2は、故障品など、3〜4台くらいあります。CA-2000やB-4等の簡単で、数をこなしている物は、容易に出品にこぎ着けるので、つい手が出ますが、B-2は手を付けた事がなかったので、後回しなってしまい溜まってしまいました。そこで、今回B-2の出品に着手したわけです。最初に1台メンテをしましたが、出力せず等のジャンクでした。見てみるとアンプ内部の接触である事が分かり、比較的簡単に治りました。ところがメーターの右チャンネルの動きがおかしいのです。発振と思われるような、異常動作を示しました。取りあえず、メーターアンプなんて作った事がないので、動作原理が良く分からないので、取りあえず、出品を諦めて、もう一台のB-2の修理に取りかかりました。こちらはメーター動作せず、メーターランプも付かずという物でしたが、これは一応音は出ましたが、メーターランプ切れとやはり同じようにLチャンネルのメーターの異常動作がありました。このままでは出品は無理と思い、メーター駆動アンプの修理に取りかかりました。CA-2000辺り以降の物は、メーター駆動アンプがモジュール化されており、大概の場合は、このモジュールの故障なので簡単でしたが、このB-2やB-1など、初期の物は、手を出したくないくらい、トランジスターと抵抗とコンデンサーのデスクリートで組んであるのです。(こんな旧式な物)メーター一つに本当に手の込んだ事をしていたものだと思います。これは、私にとって乗り越えなければならない壁でした。決心して、取りかかりました。幸いトランジスターなどは、今でも何とか入手可能な物であり、何点かの部品は手持ちがありました。最初は電解の劣化も考えましたが、最終的には、今回はトランジスターの劣化でした。
これでいけると思って組み上げたら、今度は又様子がおかしいのです。メンテ前の試聴では聞こえなかったハム音が偉く大きく聞こえました。取りあえず音を聴いてみましたが、何か変?アイドリングやDCオフセットを見てみると、かなり変でした。これは何かあると思い、電源を切り、電源周りを調べてみると、ドライブアンプのマイナス側の電圧がおかしいのです。
色々見てみて定電圧電源のコンデンサーの異常に気付きテストしてみると容量はゼロを示し、明らかに容量抜けでした。早速コンデンサーを変えて、今度は、完璧でした。
話は変わりますが、最近感じている事を少しお話ししたいと思います。昔のアンプが以外に音が良い事に気付かされます。
このB-2もそうです。私のメインは、最も初期のB-1です。偶然でしょうか。30年以上も前のアンプの音が、なぜ?なのでしょうか。多くの部品は、高温にさらされ30年間も酷使されてきたわけです。傷みかけているパーツも沢山あるかも知れません。それでも、メンテをして音を出してみると「あれッ」と思うほど音が良いのです。(後期のアンプが音が悪いといっているのではありません)パーツもオーディオ用のパーツが開発される前のアンプで、使用されているパーツは、殆どが汎用品です。それでも、こんな音が出るのかと考えさせられます。確かに初期のアンプは、後期の物から比べると、S/Nや歪み率に関しては負けますが、それを差し引いても負けないくらい良い音を聴かせます。考えられる事は沢山あります。
自分なりに考えをまとめてみました。初期のアンプの音の良さは、回路のシンプルさとオーディオ用に開発された、当時の理想の素子であるFETなどによるものではないかと思っています。回路のシンプルさは、(多くのアンプを見て)音の鮮度につながるものであると思います。回路はシンプルなほど良い。FET等の使用素子を当時はオーディオ用として、V-FETやMOS-FETを開発していました。最近は、オーディオ用FETの開発などあるのでしょうか。これだけ市場が冷え込んでしまうと素子の開発に乗り出すメーカーなど無いのではないでしょうか。(そんな物商売になりません)
私の本業は、(どっちが本業か分かりませんが)調理関係の仕事をしています。素人ながらその中で感じている事は、最高の素材をシンプルな味付けで頂く事も、美味しい食べ方です。逆に質の悪い素材を、ソースの味や香りで美味しく食べさせる事は、非常に難しく、不可能かも知れません。本当によい素材は、へたに手を加えない方が、素材の持ち味が生きます。その辺りの関係とアンプの音質も同じなのではないかと思っています。ユーザーさんが居たら機種名を上げて申し訳ありませんが、A-2000など後期のアンプは、かなり複雑な事をやっています。小信号用のA級アンプと大出力用のB級アンプをドッキングさせて、全域A級動作などといっていますが、本当に音が良くなるのか?疑問です。話が長くなりますが、私がオーディオを始めた、70年初期から現在の(ラックスやアキュフェーズなどの)高級オーディオまで、30年以上になりますが、この30年間でどれだけ音が良くなったのでしょうか。何倍良くなったと定義出来る人は居ないはずです。それは、一つには何倍といえるほど、音質は進歩していない事。もう一つは、音の善し悪しを定義出来る単位を持っていない事にあると思っています。ある面では今の高級オーディオメーカーを情けなく思っています。30年以上たつというのに、音の善し悪しを数値化して表す事が出来ない。無能振り(言い過ぎか?)何十年 か分かりませんが、数十年前に見つけられたアンプの評価特性であるノイズと歪み率という物差しでしか、未だにアンプを評価出来ないお粗末な結果が、現在のアンプを作り上げているのだと思っています。人間は、現在のところ、音に関してこれらの評価基準しか持っていないのです。従いまして、最近のアンプは、S/N比や歪み率は優秀ですが、ただそれだけ?です。 このノイズと歪みを改善する手段として、○○○新回路が常に誕生するのですが、音質の改善につながっているのでしょうか。B-1やB-2の音を聴く度に疑問が膨らみます。これらの初期のアンプは回路がシンプルであるが故、ストレートに音が伝わってくるような気がします。複雑な回路は果たして音を良くしているのでしょうか。ダンスを重ねれば重ねるほど、又は、サーボアンプによる、アンプの制御など、アンプの音質改善につながっているのかはなはだ疑問です。多くの方がご存じのように、S/N比や歪み率が音質を決定するものではありません。S/N比や歪み率は、他の条件が同じなら小さい方が良いに決まっていますが、音質を左右するものではありません。なぜ、未だに音質を数値化出来ないのでしょうか。素人の私には、大きな疑問です。私が思っているようにオーディオはすでに終わっているのでしょうか。この問題解決は、現在残っている高級オーディオメーカーの使命でもあると思います。でないとこれらのオーディオメーカーも単なる価格の高級化だけで生き残っているに過ぎないのではないかと思っています。ですから、私には、各メーカーがしのぎを削り、オーディオ用のパーツまで開発に力を入れた70〜80年代のオーディオに魅力を感じています。価格も手頃ですし、当時の面白いものが沢山あります。名器もあります。最近の高級オーディオメーカーは手もでませんし、(私には)魅力ある個性は感じられません。音の進歩とは何なのでしょうか。これがオーディオの永遠のテーマなのでしょうか。
(感じるままに書きました。言葉が過ぎた部分はご容赦下さい。また、例として、メーカー名を上げましたが、私の本意は、特定のメーカーや特定の個人を中傷非難するものではありません。宜しくお願いいたします。)また、ここに使用しています写真は、著作権を放棄しておりませんので、無断での使用、転載を禁止します。
さて、簡単にメンテの流れを写真付で載せました。出品ページと重複する部分もあるかと思いますが、ご覧下さい。

 
B-2をばらして、最初にボリュームと切替スイッチのボリュームスイッチ関係の接触があまり良くなかったのでメンテしました。   これは、終段のV-FETを駆動する為の、ドライブ基板です。比較の為手前側クリーニング前の物と奥のクリーニング後の物を並べて撮りました。汚れ具合はご覧の通りです。
 
これが大型のヒートシンクに取り付けられているヤマハのオリジナルV-FETです。左がメンテ前野茂のです。グリースが乾いてパリパリといった感じです。塗布されていないところもあるようです。このグリースは発熱の大きいこのFETの放熱を司る大型のヒートシンクとの熱伝導を高める為に塗布されている物ですが、この様な状態のママ使い続ける事は、FETの寿命を縮めてしまいますし、破損にもつながります。右側のFETのように少しはみ出るくらい塗ると密着も良くなり、熱伝導も十分で安心して使えます。   ヒートシンクから外した直後のFETです。足の色ご覧下さい。産柿膜が出来て黒ずんでいるのが見えると思います。この足も取付の際に、ソケットに差し込むわけですから2個の接点になるわけです。この色から良い音は期待出来ません。
 
左がメンテ前の磨いていない足です。右が磨いて取付前のFETです。違いがご覧頂けるでしょうか。磨くとこの接点の色と同じように、音も光り輝くのです。   これは、外したFETの2本足を磨いた後の写真です。光っているのがご覧頂けると思います。この足もヒートシンクに取り付ける際に、ソケットに差し込みますから、接点となるわけです。酸化皮膜が出来ているしているようでは良い音は出ません。外したついでに磨いています。
 
磨いた後にグリースを十分に塗布し、取り付けられたFETです。見えませんが、勿論有りはピカピカです。   B-2は最近のアンプのようにケーブルを多用するような造りではなく、配線は、非常にシンプルで、殆どを手間のかかる半田付けしておりますので、(他のアンプから比べると数的には接点となる箇所の数は少ない)接触という問題はそれ程気にする必要がありません。数少ない接点であるチェックポイントだけ抑えれば良いので、ある面容易です。こんなコネクター付の基板を見ると、いかにも旧式な感じがしますが、下手なケーブルコネクターよりも接触は確実かも知れません。ドライブ基板とパワーFET取付基板を繋いでいます。ここにも信号の通る接点が存在します。
 
ドライブ基板とパワーFET取付基板を繋ぐジョイント部分ですが、右のみがいた物と左の磨く前の物の色の違いをご覧頂けますでしょうか。
音は確実に違ってきます。
  安定化電源基板です。クリーニング前の状態ですが、この様に薄汚れて、一部高熱部分は焼けています。フューズの色ご覧頂けますか。これも電源の接点になります。直接音声信号は流れませんが、電源に抵抗がある場合、電圧降下(規定の電圧が出ない)を起こします。
車で言えば、ガソリンが十分に行き渡らない状態になるわけです。これもこのまま放置すれば、悪い音の原因になります。勿論、綺麗にクリーニングしてあります。このアンプではありませんが、以前修理中にAC電源のあるパーツに接触抵抗があり、クリップ(潰れた)した交流波形を見た事があります。
 
電源基板のヒューズです。磨く前の物と磨いた後の物を並べてみました。一目瞭然です。   全てのアンプは、ご覧の通り、リレー接点も外してメンテしています。
 
片側のみ載せましたが、もう片チャンは、0.9Ωで僅かでしたが、抵抗値を示しました。こちらは17.3Ωと大きな値です。これでは良い音はしません。リレーONの状態を再現する為、輪ゴムでリレーをON側に倒しています。(片手にテスターリード、片手にカメラではこれが限界です)   同じリレーも適切なメンテをすれば、ご覧の通りです。0.03Ωはこのテスターの許容誤差です。抵抗値ゼロと見なく事が出来ます。この違いは全ての接点について言える事です。他の接点は数値としてご覧頂く事が出来ませんでしたが、接点の接触抵抗はご覧の通り、大小はありますが、メンテ無しでは必ず何らかの抵抗が発生するという事です。この接点の数が10個もあったなら出てくる音が違って当たり前です。新品時の音が蘇るとはこの様な事を言っているのです。
   
全てをシャーシに組み上げて完成です。さて、音出しが楽しみです。
どんな音が出ますか?
   

B-2の音が、それ以降のヤマハのパワーアンプの原点になったのではないかというお話の続きです。これは、私の感じた音の印象とオーディオメーカーヤマハのその後の開発を見て感じたものです。
(勝手な推測です。また、記憶に思い違いがあるかも知れません。)
ヤマハは、B-1の開発にあたり、徹底して素子の開発まで一貫して取り組んでいました。K77だったか東北大学の学長である西澤教授もこの素子の開発にあたったとか?言われています。当時の理想のオーディオ素子(ディバイス)の開発にあたったわけです。そのごB-2、B-3は多分K76とJ26のコンプリを使っていたとも居ますが、この間ヤマハは一貫してパワーアンプの出力段にはV-FETを使い続けました。しかし、これ以降発売されるB-4,B-5辺りからは、出力段もトランジスターを使うようになりました。B-4ではA級とB級の切替が出来る方式を採用しましたが、B-5からはリニアートランスファー回路なる新回路を開発し、トランジスターの出力段でも見かけ上V-FETに近い動きをする回路を開発しています。このB-4辺りのトランジスターを使う頃からは、ヤマハでは出力素子の開発はしなくなってしまったようです。この辺りから私もオーディオを止めて、パソコンを始めた頃でその後は詳しく知りません。オーディオも徐々に下火になり、各社開発が難しくなっていったのではないでしょうか。しかし、新技術を発表しないと製品は売れないですから、各社それぞれに何々回路と名前の付く開発はされていったようですが、この流れを見ていると、ヤマハでは、V-FETアンプをベースに開発をしていたと思われます。出力素子の種類だけで音が決まるわけではありませんが、素子の持つ特性は、必ず音に出る物であると思います。この様な経緯からも音造りのベースはFETであったのではないかというような気がします。

それからもう一つ、今回B-2を初めて手がけました。音を出して感じた事は、C-2との相性が非常によいという事を感じました。音のバランスが非常に良いのです。単体では、それぞれの個性が、マイナス方向に働いて、欠点として映り、音の印象を悪くしています。ところがC-2とB-2をペアで聴くと、これが非常に良いのです。お互いの持ちが時が、お互いの欠点をカバーしあって、この組み合わせは、音質的にプラスの方向に働き、バランス良くなってくれます。
考えてみれば、当然の事だと思いますが、私には不思議な体験でした。C-2とB-2は、本来はプリメインアンプではなかったのかと思いたくなります。それをメーカーの思惑(販売価格や商品戦略など)で、セパレートアンプになったのでは?と重たくなるほど、このペアはバランス良いです。C-2もB-2の音も見直しました。
今回の体験から、感じた事は、同じメーカーでも常に同じ傾向の音造りをしているとは言えないという事、(ファッションと同じで流行があったのでは)それぞれの時代音造り、ユーザーの嗜好などにより、同じメーカー製でもシリーズにより違う物です。だから、同じ世代のアンプ同士の組み合わせの方が、バランスがよいケースが多いのではないでしょうか。これは、絶対的なものではなく、(私はB-1とPRA-2000シリーズの組み合わせが好きです)こんなケースもあるという事です。今回の体験を通して、こんな事を感じたのです。